吹雪さんはオレを心配して、面倒をみてくれようと熱心に誘ってくれた。
だが、オレはもう闇の世界との縁を断ち切りたかった。
吹雪さんは心配してくれているが、オレはオレの道を自分で見つけようと思う・・・。
























二年後・・・



渋谷・・・






ヨハンの事件から二年が過ぎ、オレは久しぶりに渋谷を訪れた。
少しずつ街並みに変化はあるが、若者が集まるこの街は、事件のあったあの当時とほとんど変わっていない。
相変わらず人混みが激しく、道を歩くのにも一苦労だ。





いてっ・・・。


通りすがる時、人とぶつかってしまった。

「痛たた・・・あれっ?ねえ、キミ・・・十代くん・・・。十代くんじゃないか!ハハッ。久しぶりだね、元気だったかい?」

聞き覚えのある懐かしい声・・・。

「あっ・・・吹雪さん・・・」

ぶつかった相手は吹雪さんだった。
久しぶりに再会した吹雪さんは相変わらずの長い髪と見惚れる程綺麗な顔で、あの頃と変わらない。

「なに?ジッと見て・・・。それにしてもホント久しぶり。あの後、十代くん急に消えちゃって・・・心配したぞ」

人懐っこい素振りで吹雪さんが話し掛けてくる。
あの時と変わらない表情で。

「どうしたの?僕に会いに来たのかな、ハハッ」
「いや・・・ええっと・・・」

あの事件後、満足な挨拶もせずに吹雪さんの前から姿を消してしまったので、少しバツが悪い。
何から説明すればいいのかな・・・。

「十代くん・・・十代く〜ん〜〜〜♪」


・・・。


「んん?」


・・・。
・・・・・・。


「もう、久しぶりの渋谷は人が多くて先生、迷子になっちゃうトコロでしたにゃ♪十代くんったら、歩くの速いにゃあ」
「うわ。何、この見るからにヘタレ野郎は?知り合いなの、十代くん」


・・・・・・・・・。


あははは・・・まいったな。

「な、何ですか、あなたは!?業界人の私に対して失礼だにゃ。まったく!」
「はぁ〜・・・、見事なヘタレ野郎だなぁ、ハハハッ」


・・・・・・・・・。


「また言った!また失礼な事言ったにゃ!!この男」
「十代くん、田舎から出てきたようなこのヘタレ野郎の東京見物に付き合ってやってるの?ハハハッ」
「えぇっ!?あ・・・いや・・・そのぉ〜」

吹雪さん・・・先生がいくら頼りなさそうに見えるからってそれは・・・。
もしかして男が嫌いなんだろうか。
いや、そんな事よりどうこの場を誤魔化せば・・・。

「私と十代くんはラブラブ・デート中なんですにゃ。お邪魔虫はご遠慮くださいにゃ〜」

大徳寺先生は吹雪さんにそう言うと、オレを自分の腕の中に抱き締めた。
あ・・・、言っちゃったよ先生・・・。

「はぁ!?ねえ、十代くん・・・キミ、ヘタレ好きだったの???」
「いやぁ〜・・・その、あははは・・・」
「もう〜、さっきからヘタレ、ヘタレと失礼にゃ!先生、本気で怒っちゃいますにゃ!ぷんぷん!!」

あの事件の後、先生は極度の恐怖心と猜疑心から妙にオレに懐いてしまって・・・気が付いた時には・・・。

「ふ、吹雪さん・・・、また今度改めて挨拶しに行くよ。オレたち、今日は急いでるから・・・。さ、行こう。先生」
「にゃぁ〜ん、待って、待ってくださいにゃ十代く〜ん♪」

オレは先生を促し、足早にこの場を去った。
オレの背に吹雪さんの声が突き刺さる。

「十代くん!天国の亮に何て報告する気だ!」

吹雪さん・・・カイザー・・・ごめんなさい。
オレ、先生がほっとけなくて・・・。
オレ、オレ・・・大徳寺先生と幸せになります・・・。